本番に弱い人
僕は本番にとても弱い。
いかなる本番にも弱い。
中学、高校と没頭していた陸上競技でも本番の大会では
いい結果がなかなか出せなかった。
それまでの練習ではいいタイムが出せているのに、
なぜか大会では平凡なタイムで終わってしまう。
なぜか?
なぜかと言っておきながら答えは明らかで
『精神的に弱い。そしてとても、とても緊張するから』
理由はこれだけ。
小学生くらいからその理由は分かっていた。
しかし決定的な打開策が思い浮かばない。
それでも、繰り返しの練習とイメージトレーニング。
できることは色々やりましたよ...... 確かに。
しかし本番ではド緊張で体はガチガチに固まり、声も出ない。
学生時代はそういう繰り返しでした。
今思えば悲惨な青春だ。
現在、僕はサラリーマンをやりながらではあるけれど、
陶芸をやっている。
この陶芸というのは『本番があるようでなく、ないようで実はある』
といった不思議な仕事なんですね。
こんなんじゃ何のことか分からないので、
具体的に言えば陸上の大会や学校のテストみたいな
分かりやすいバリバリの『今が100%本番ですよ』が無いんです。
個展やグループ展の開催が本番と言えるか?
たぶん違う。
その時には全てが出来上がっていて、
作品の見せ方とかは考える必要があっても、
その場ではもう何もできない。
作り直すこともできなければ、焼き直すこともできない。
とすればいつが本番か?
個展やグループ展に出品するまでの期間が
本番になる(と思う。)期間が本番?
そう日常の中に、毎日の作業の中に本番(みたいなもの)が
存在している。
けれども、陸上の大会や期末テストみたいにド緊張は全くしない。
作業をしている毎日が本番なのに不思議と冷静でいれちゃう。
本番というニュアンスではなく、試行錯誤。
それこそテストの繰り返しという感じ。
何回(個)か作り何回か焼いてみて、
その中でベストなものを出品する。
こういう仕事の進め方は、僕にあっているのかもしれない。
緊張感を持って、テンションを上げて作っても
疲れや気負いはほとんどない。
とは言うものの、こういう仕事をするには、
しっかりとした計画性と時間に余裕を持つというのが
前提にあるんだけれども。
考えてみると僕の兄や弟はよくやってるなぁと感心してしまう。
兄の仕事は俳優業。
リハーサルがあって本番がある。
NGがあって撮り直しとかはあるにせよ、本番は本番。
僕のそれとは訳が違う。
僕から見れば俳優の仕事の『本番度』はかなり高い。
たまに舞台なんかを観にいくけど、
あれはもう観ているこっちが緊張しちゃう。
お客さんは目の前にいるわけだし、
NGがあっても芝居を止めることはできないし。
弟だってバンドをやっていて、
ライブハウス(って言うのか?)で
お客さんの前で本番の演奏をする。
僕なら考えただけでも寝込みそうだ。
(譜面や歌詞カードを見ながらロックを叫ぶバンドは
聞いたことがない)
以上、本番にすごーく弱い僕が辿り着いた仕事は
『本番が本番本番していない』という、
とっても自分に合った仕事というお話しでした。
~念のため~
本番に弱いからという理由で陶芸を選んだわけではありません。
よーく考えたらそういうことだったというだけです。
~紗有見メッセージ~
本場に弱い私は彼の言わんことが手に取るようにわかります。
学会発表なんかもそうです。
何回も練習して、スライドを組み立てて本番を迎えているのに
いざ始まると頭が真っ白になっちゃう。
6月に東北矯正歯科学会のランチョンセミーナーの講演を依頼され
1年かけて用意したにもかかわらず、60分間何を話したか覚えていない(涙)
楽譜を覚える能力もなく、楽器は手をつけてはすぐ断念!!
何一つ身に付いたものは無いのです。
学芸会の劇もセリフの無い役にしか、手を挙げたことが無いなぁ~。
「明日、早朝から撮影です」と、さらりと言ってのけるお兄さんに
焦りや切羽詰った感じが無いのも、俳優業をやってのける能力が
ある人にだけ与えられたタマモノなのだといつも思いいます。